次の10年でカンボジアは、人口増加を背景に経済的に大きな成長を遂げ、とても魅力的な国になっているでしょう。過去数年間で経済は急速に成長しましたが、政治の部分では不透明な先行きがチラホラ見られます。しかし、ある程度のリスクを背負って初期の段階からカンボジアで不動産投資を行ってきた人びとは大きな恩恵を得ているはずです。
この記事では、これから、もしくは既にカンボジアで不動産投資を始めている方にも不動産を購入する際に知っておく必要がある重要な情報をまとめてみました。
外国人はカンボジアで不動産を購入することができますか?
カンボジアは、自国における外国人の不動産の所有に対して、タイや他の多くの東南アジア諸国と似た規制を設けています。例えば、カンボジアにおいて外国人はコンドミニアムの所有権のみを取得することができますが、土地を所有することは認められていません。これは、フィリピン、ベトナム、タイと同様ですね。同国の改正投資法の第16条に定められている通り、カンボジア国籍を有する者、またはカンボジア法人には土地を所有する権利が有ります。
外国人はカンボジアに不動産を購入し、所有することは出来ませんが、少なくともそれをコントロールする方法はあります。
カンボジアの土地の購入方法
外国人であっても以下の方法で、カンボジアの土地を購入することができます。ただし、これらの購入方法にはそれぞれリスクが伴いますし、カンボジアの不動産を購入することが初めてなのであれば、かなりの労力と時間が必要となります。
また、どの方法を使って土地を購入する場合にも、現地の法律や慣例に詳しい信頼できる仲介業者と弁護士を雇うことをオススメします。
方法1:カンボジア法人を設立して、その法人名義で土地を購入する
こちらは、恐らく外国人がカンボジアに土地を買うもっとも安全な方法でしょう。ただし、法人を設立するプロセスには多少の資金と時間が必要となります。また、法人の株式の51%をカンボジア人が保有する必要があります。ですので、現地に法人を設立したことを決めた際には、信頼できるカンボジア人と一緒に会社を設立することが重要です。たとえ、外国人が株式の49%しか所有できないとしても、残りの51%の株式を所有するカンボジア人のパートナーと契約を通して取り決めを行うことで、外国人は不動産の所有権をコントロールすることができます。
カンボジア法人を設立する前に現地の法律や規則、法人設立にかかる費用などをしっかりと把握しておきましょう。
方法2:リースホールド契約を設定する
外国人は、カンボジアにある土地を15〜50年という限定された期間にわたってリースホールド契約を結ぶことで、それを使用することができます。このリースホールドの期間は、さらに最大で50年間延長できる可能性があります。もし、その土地が国によって所有されている場合、リースホールドの期間は最長で40年となります。
リースホールド契約を交わす前にもっとも重要なことは、契約相手が正式に土地を所有しているかどうかを確認することです。
この先を解説する前に、タイトル(所有権)が何かを手短に説明しておきますが、タイトルとはその建物や土地などを含む不動産の所有権を確認し、所有者がその不動産を所有する権利を示す書類です。所有者に認められている権利とは、例えば不動産を管理すること、もしくはその不動産を売却したり賃貸に出したりすることです。
土地のタイトルについて調べることで、誰がその土地を正式に所有しているかが分かります。タイトルについて調べると、その土地の所有者、その土地に登録されている抵当などがあるかどうかを確認することができます。これによってリースホールド契約をより安全に結ぶことができます。
方法3:カンボジア国籍を取得する
カンボジア国籍を取得した上で土地を購入するという選択肢は、簡単ではないですし、魅力的なものでもありませんが、念のために解説しております。
カンボジア国籍を取得するには2つの方法があります。1つ目は、少なくともカンボジアに7年間滞在し、カンボジアの母国語であるクメール語を使えることを示します。2つ目は、多額の寄付や投資することで国籍取得の申請を行うことができます。この申請が大統領に認められれば、晴れてカンボジア国籍を取得することができます。
方法4:カンボジア人の代理人を指定する
カンボジア人の代理人を指定し、カンボジアの土地を購入する方法はもっとも一般的で容易な方法です。他の方法に比べて費用も安価です。
この方法を簡単に説明しますと、カンボジア人の代理人を指定した上で、その方を通じて土地を購入するということです。土地はこの代理人によって購入されますが、その前に信託契約を代理人と交わすことで、土地を支配する権利を外国人購入者に与えます。
土地の所有者は、その土地を抵当に入れた上で投資家である外国人にリースすることが一般的です。この際には、さまざまな契約書類が必要となりますが、もっとも重要なのは、”Nominee Security Agreement(代理人セキュリティ契約)”と呼ばれる契約書です。この契約書では、投資家である外国人がその土地を支配する権利を持つことが明記されており、現地の代理人がその土地を第三者に売却、譲渡、リースするリスクを最小限に抑えてくれます。
それでは、こういった契約書を交わせばカンボジア人の代理人を指定した上で土地を購入する方法は安全なのでしょうか?
残念ながら、完璧な安全であるとは言い切れません。その理由は次の通りです。
まず最初に、この土地の購入方法はカンボジア政府によって禁止されています。よって、購入した土地が没収される、もしくは強制的に売却される危険性があります。もしかすると、10年以内にこの購入方法は政府によって認可される可能性もありますが、現時点ではリスクが伴います。
次に、代理人が土地を所有したまま逃げてしまうリスクがあります。カンボジアの法律は、必ずしも完璧に防水保護されているとは言えないので、どこかで漏れが生じます。現地の裁判所で争ったとしても、必ず勝てるという保証はどこにもありません。
方法5:カンボジア人のコンドミニアムを購入する
経験豊かな投資家は、カンボジア人の代理人を通じて土地を購入し、支配するという方法をとってきました。しかし、前述の通りこの購入方法はリスクが伴いますし、経験と信頼できるカンボジア人の協力が必要となります。
よりリスクが軽減された投資方法は、コンドミニアム(日本で言うマンション)を購入することが一番簡単です。コンドミニアムとは、複数の所有者が別々のユニットを持つ共同所有タイプの建物のことです。建物には、共有エリアもあり、その建物の中に物件を所有する方、もしくはそこ住んでいるテナントが利用することができます。
カンボジアの土地の所有権はどのようなもの?
カンボジアに投資をする前にカンボジアの土地の所有権には、大きく分けて4種類あることを知っておきましょう。
- ソフト・タイトル (こちらには様々なものがあるが、一般的にはコミューン、サンカットと呼ばれる地方自治体の長が申請者による物件の占有を証明した書面や、売買当事者の占有権譲渡契約書を上記地方自治体の長が認証した書面を指す。正式に登記所に登記がなされていないものであり、所有権を示すものではない。)
- ハード・タイトル (こちらは、記載されている権利が国土整備・都市化・建設省の管轄下にある登記所に正式に登記されている権利であることを示す。登記手続の違いにより3種類がある。)
- ストラタ・タイトル (こちらは、コンドミニアムのように分譲された居住スペースの所有権である。)
- LMAP (LMAPは、カンボジア土地管理事業のことを指し、不動産を所有する方法の中でもっとも安全で透明性が確保されているものです。世界銀行は、2002年にカンボジアにおける土地権保障の改善を図り、現地の不動産所有者を保護するために不動産を登記するための効果的なシステムを策定することを目的としたプロジェクトです)
前述の通り、外国人は土地が付いた不動産をソフト・タイトルで購入することはできません。ただし、ストラタ・タイトルは購入可能です。
ソフト・タイトルとハード・タイトルの違いは?
ソフト・タイトルとハード・タイトルのもっとも大きな違いは、ソフト・タイトルは所有する不動産がある地域レベルで登記・認知されているもので、ハード・タイトルはカンボジアという国レベルで登記されている所有権となります。よって、ハード・タイトルの方が権利の面で優れていると言えます。
現時点でソフト・タイトルは、より広範に好まれて使われています。都市部にある不動産の70%、郊外にある不動産の80%がソフト・タイトルの所有権をもって登記されています。
ソフト・タイトルのメリットは、ソフト・タイトルが付いている物件を購入する際には、所有権の移譲がより迅速で容易に行えるという点です。これに加えて、ハード・タイトルを移譲する際には、4%の譲渡税を支払う必要がありますが、ソフト・タイトルの場合、この税金を支払う必要はありません。
一方でソフト・タイトルのもっとも有名なデメリットは、ソフト・タイトルを持つ物件には住宅ローンを活用することが出来ず、また前の所有者に関する情報も非常に乏しい点です。
ハードタイトルのメリットは、外国人にも多く発行されてきている所有権で、多くの恩恵を得ることができます。例えば、当該不動産の所有権に関する情報がより透明性があり、前所有者の情報も全て得ることができます。
外国人としてカンボジアに不動産を購入する際に支払う必要がある税金は?
下記は、外国人がカンボジアに不動産を購入する際に支払う必要がある税金です。
譲渡税:不動産の購入価格の4%の譲渡税を支払う必要があります。
固定資産税:不動産の評価額の0.1%の固定資産税を支払う必要があります。こちらは毎年支払い必要があります。
賃貸所得税:外国人がカンボジアに不動産を購入し、それから賃料を得る場合、年間賃料に対して14%の賃貸所得税を支払う必要があります。
キャピタルゲイン税:こちらは不動産を売却し、その売却益に対してかかる税金です。キャピタルゲイン税は、売却益に対して20%となっています。